2025年4月に新設された雇用保険の新たな給付のひとつに「育児時短就業給付金」があります。4月から育児時短就業を開始し、制度の対象となる方については初回の支給申請期限が7月末となります。
育児時短就業給付金は2025年4月1日以降に育児時短就業を開始した方が対象になりますが、転職された方や2025年4月1日以前から育児時短就業に相当する就業を行っている方についても対象になる場合があります。
今回は育児時短就業給付の制度と実務対応について確認していきましょう。
受給資格と対象となる時短就業
育児時短就業給付金は、①・②の要件をいずれも満たす方が対象となります。
①2歳未満の子を養育するために、1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業する被保険者であること。
②育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始したこと、または、育児時短就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12か月あること。
※「育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始したこと」とは、育児休業終了の翌日から育児時短就業を開始した場合だけでなく、育児休業を終了した日と育児時間就業を開始した日の間が14日以内の場合を含みます。
対象となる時短就業は、育児介護休業法に基づく所定労働時間の短縮(1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むもの)に限られません。また、短縮後の1週間あたりの所定労働時間に上限や下限はなく、2歳未満の子を養育するために1週間の所定労働時間を短縮した場合は対象となります。
正社員から短時間正社員やパート等に転換した場合や転職したことにより、1週間あたりの所定労働時間が短縮されている場合も育児時短就業と取り扱われます。
支給対象期間と各月の支給要件
育児時短就業給付金は、原則として育児時短就業を開始した日の属する月から育児時短就業を終了した日の属する月までの各暦月(支給対象月)について支給されます。
ただし、次の①~④の場合には、その日の属する月までが支給対象期間となります。
①育児時短就業に係る子が2歳に達する日の前日
②産前産後休業、育児休業または介護休業を開始した日の前日
③育児時短就業に係る子とは別の子を養育するために育児時短就業を開始した日の前月末日
④子の死亡その他の事由により、子を養育しないこととなった日
支給対象月の各月において、①~④の要件を全て満たす場合に支給されます。
①初日から末日まで続けて、被保険者である月
②1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
③初日から末日まで続けて、育児休業給付または介護休業給付を受給していない月
④高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月
支給額
育児時短就業給付金は、支給対象月に支払われた賃金額が育児時短就業開始時賃金月額と比較して低額となった場合に、原則として支給対象月に支払われた賃金額の10%が支給されます。ただし、支給額と各月に支払われた賃金額の合計が育児時短就業開始時賃金月額を超えないように調整されます。
(1) 支給対象月に支払われた賃金額が育児時短就業開始時賃金月額の90%以下の場合
支給対象月に支払われた賃金額×10%
(2) 支給対象月に支払われた賃金額が育児時短就業開始時賃金月額の90%超~100%未満の場合
支給対象月に支払われた賃金額×調整後の支給率
(3) 支給対象月に支払われた賃金額と、(1)または(2)による支給額の合計額が支給限度額を超える場合
支給限度額-支給対象月に支払われた賃金額
※2025年7月31日までの支給限度額は459,000円
調整後の支給率については、厚生労働省の「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」に支給率早見表が掲載されています。
支給申請手続き
育児時短就業給付金の支給を受けるためには、①育児時短就業開始時賃金の届出、②受給資格確認、③支給申請を行う必要があります。これらの手続きは原則として会社が行うこととなっています。(①の届出を除き、本人が希望する場合は被保険者が直接提出することも可能です。)
①②と③の初回支給申請を同時にする際の様式と添付書類は次のとおりです。
【様式】
(1)雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書・所定労働時間短縮開始時賃金証明書
(2)育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金支給申請書
【添付書類】
・賃金月額証明書に記載した賃金支払基礎日数、賃金額と支払状況、育児時短就業を開始した日、週所定労働時間が確認できるもの
※賃金台帳、出勤簿、タイムカード、労働条件通知書、育児短時間勤務申出書、育児短時間勤務取扱通知書、就業規則など
・育児の事実、出産予定日及び出生日を確認できるもの
※母子健康手帳(出生届出済証明のページと分娩予定日が記載されたページ)、住民票など
なお、育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始した場合は、育児休業給付に係る休業開始時賃金日額を賃金日額とするため、様式の(1)及び添付書類の「育児の事実、出産予定日及び出生日を確認できるもの」は提出不要です。
2回目以降の支給申請は「育児時短就業給付金支給申請書」に賃金台帳などの支給対象月の賃金額と支払状況が確認できるものを添付して申請となります。従前の支給対象月から育児時短就業中の週所定動労時間に変更がある場合には、加えて育児時短就業中の週所定労働時間を確認できるものが必要となります。
【提出時期】
受給資格確認と初回の支給申請を同時に行う場合、最初の支給対象月の初日から起算して4か月以内です。(例:4月10日から育児時短就業を開始した場合、提出期限は7月31日まで)
2回目以降の支給申請時期は「育児時短就業給付申請日指定通知書」にて、次回支給対象月の初日から起算して4か月以内の期間で公共職業安定所長により指定されます。
注意したいケース
注意したいケースはいくつかありますが、2つのケースを取り上げたいと思います。
1つ目は転職のケースです。以前に勤めていた会社で育児時短就業給付金を受給しており、引き続き2歳未満の子を養育するために育児時短就業をしている場合は、支給要件を満たす限り転職後も支給を受けることができます。また、転職を機にパートや短時間正社員となり、1週間当たりの所定労働時間が従前と比較して短くなった場合も育児時短就業として育児時短就業給付金の対象となります。
ただし、転職によって被保険者期間に空白期間がある場合は、その間に基本手当などの受給資格決定を受けていないことが必要です。
2つ目は2025年4月1日以前から育児時短就業に相当する短時間勤務を行っているケースです。育児時短就業給付金は原則として2025年4月1日以降に育児時短就業を開始した方が対象となります。
ただし、2025年4月1日以前から育児時短就業に相当する就業を行っている方については、経過措置として、2025年4月1日から育児時短就業を開始したものとみなし、受給資格と各月の支給要件を満たしている場合には、2025年4月1日以降の各月を支給対象月として支給対象となります。
冒頭でも触れましたが、4月1日以降で育児時短就業給付金の支給対象となる方について、初回の申請期限は7月末日となります。既に準備や申請を進めていることと思いますが、今一度、対象となる方の確認をし、忘れずに申請を行いましょう。