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投稿日:2025年4月1日

試用期間中の解雇について、有効性のポイントと注意点

新年度を迎え、新卒社員や中途社員の研修が始まっている時期ではないでしょうか。
どんなに慎重に採用活動をしても、入社後の研修や業務を進める中で、勤務態度の不良や、会社が求める能力に達しない等の問題が起こる場合があります。そこで、多くの会社が、本採用前に「試用期間」を設け、新しく雇い入れた従業員の適性を判断し本採用とするか否かを見極めています。しかしながら、試用期間中の従業員に適性が認められないからといって、従業員を自由に解雇することはできません。試用期間中の解雇について誤った理解に基づいて判断すると、不当解雇とされる可能性があるため、慎重な対応が求められます。
今回は、試用期間中の解雇について確認していきましょう。

試用期間中の解雇とは?

「試用期間」はあくまでも業務遂行能力を見極める期間であって、当然に労働契約が成立しており、解雇についても普通解雇と同様に、労働契約法第16条の解雇権濫用法理の適用を受けます。つまり、自由に解雇できるわけではなく「客観的に合理的な理由」を欠き、「社会通念上相当である」と認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効となります。
では、普通解雇と試用期間中の解雇では何が違うのでしょうか?
試用期間は一般的に「解約権留保付き労働契約」と解釈されています。これは、労働契約は成立しているものの、使用者に一定の範囲で“本採用を拒否する権利”(解約権)が認められているためです。そのため、試用期間中の解雇は普通解雇より比較的広く認められる傾向にあります。

試用期間中の解雇が有効なものと認められるには?

試用期間中の解雇にも2つのパターンがあります。定められた試用期間をもって本採用を拒否し解雇する場合と、試用期間の途中で解雇する場合です。
いずれの場合にも、解雇が有効なものであると認められるには、次の2点がポイントになります。

① 解雇の合理的な理由があること
② 社会通念上の相当性があること

具体的なケースとしては、試用期間中に無断欠勤が続く場合や、業務遂行能力が著しく不足している場合、体調不良で職務に耐えられない場合などが挙げられます。
ただし、問題行動や能力不足等があったというだけでは足りず、会社が教育や指導を行うなど適当な対応をしたにもかかわらず、改善が見られないといった要件も求められます。社会通念上、解雇にすることが相当であると認められるに足る事実が必要です。
また、試用期間の途中で解雇する場合には、本採用を拒否する場合に比べ、より一層合理的かつ相当の理由が必要となります。約束されていた試用期間の満了を待たずに解雇するわけですから、厳格な判断が求められるのは当然と言えます。

試用期間中に解雇する場合の注意点

このように、試用期間中の解雇は、試用期間の性質から一定の要件のもと普通解雇よりは認められやすくなっていますが、適切に判断を行わなければトラブルに繋がります。
実務上の対策としては、試用期間中の評価基準や本採用にするための条件を就業規則などで明確にしておくことが大切です。従業員と本採用判断の認識を合わせておくことで、評価される側が求められる能力や基準を知る事ができ、やむを得ず本採用を拒否する場合にも従業員の理解を得やすくなります。また、問題行動や能力不足が認められた場合には、教育や指導など改善の機会を与え、面談記録や指導書の作成など客観的に合理性を判断できる記録を残しておくことが重要です。

解雇とする場合には、試用期間中だからと安易に判断せず、採用後の問題については社労士など専門家に相談しながら慎重に対応していきましょう。

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