2024年4月5日、厚生労働省労働基準局は、在宅勤務手当に関する割増賃金の算定方法ついて、都道府県労働局⾧宛に通達を発表しました。この通達により、2023 年の規制改革実施計画に基づき、在宅勤務手当が合理的・客観的に算定された実費弁償である場合、割増賃金の算定基礎から除外できることが明確になりました。
①割増賃金の基礎となる賃金の規程
労働基準法第37条およびその施行規則により、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金に限り、割増賃金の基礎から除外できます。在宅勤務手当は、これらの賃金に該当しないため、割増賃金の基礎賃金に算入すると考えられますが、実費弁償として合理的に整理される(従業員が業務のために負担した金額を特定し、精算することが外形上明らかである)場合には、割増賃金の基礎賃金に算入しないとされました。
②実費弁償としての在宅勤務手当
在宅勤務手当のうち、実費弁償に当たり得るものとしては、事務用品等の購入費用、通信費(電話料金、インターネット接続に係る通信料)、電気料金、レンタルオフィスの利用料金などが示されています。通信費(電話料金、インターネット接続料)および電気料金については、支給対象の従業員ごとに、支給月から直近の過去 3 ヶ月程度の料金とその歴日数、および在宅勤務日数を用いて、1 ヶ月当たりの業務使用分を計算します。この金額は毎月改定する必要はなく、一定期間(最大 1 年程度)継続して支給できるとされています。
・業務のために使用した通信費(国税庁在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQより)
【算式】
・業務のために使用した電気料金
【算式】
このように、在宅勤務をする従業員ごとに、業務のための費用を算出しなくてはなりません。 1 年に 1 回の見直しとしたとしても、かなりの事務負担になると思いますので、実際の導入については要検討だと思います。
③その他の留意事項
既に割増賃金の基礎に算入されている在宅勤務手当を実費弁償として整理する場合、支払われる割増賃金額が減少することになるため、労働条件の不利益変更とみなされる可能性があります。労働条件の不利益変更は個別の同意が必要ですので、説明会を実施するなど丁寧な対応が必要となります。