労働基準法では、労働契約の締結時や更新時に、労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと規定しています。雇用環境の変化を受け、この労働条件の明示に関するルールが、2024年4月より変更になります。
■ そもそも、労働条件の明示義務のある事項とは?
以下の事項については、労働契約の締結時に、労働者に明示しなければなりません。
1 労働契約の期間
2 有期労働契約の更新の基準
3 就業場所・従事すべき業務
4 始業・就業時刻、所定労働時間超えの労働の有無、休憩時間、休日、休暇、2交代制等に関する事項
5 退職(解雇を含む)に関する事項
6 その他※
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払方法、退職手当の支払時期
- 臨時に支払われる賃金(退職手当除く)、賞与、精勤手当、奨励加給、能率手当、最低賃金額
- 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
- 安全衛生、職業訓練、災害補償・業務外の疾病扶助、表彰・制裁、休暇に関する事項
(参照:厚生労働省 労働契約締結時の労働条件の明示 リーフレット)
上記を踏まえた上で、今回のテーマである、労働条件の明示ルールの変更の対象となるのは、「就業場所・従事すべき業務」と「有期労働契約の更新の基準」になります。
■ すべての労働者に対する明示事項
~就業場所・従事すべき業務の明示~
従来、「就業場所・従事すべき業務」については、契約“直後”の内容を明示すれば足りるとされていましたが、制度改正により、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示も必要になります。
この変更の範囲とは、将来の配置転換などによって変わり得る範囲を指します。つまり、労働者に対して、将来の転勤の有無やその範囲、また業務についても職種が限定されているか否かなど、将来的にどのような業務に従事する可能性があるのかも含めて、明示することになります。
■ 有期契約労働者に対する明示事項
~有期労働契約の更新の基準:更新上限・無期転換申込機会等の明示~
① 契約更新上限の明示
有期労働契約を締結する際に、更新上限として、通算契約期間や更新回数の上限を設けている場合には上限を設けている旨と、その内容を明示することになります。なお、設けていない場合はその旨を明示します。
上限を設けていない場合であって新たに設ける場合や、例えば更新回数の上限を5回としていたものを3回に短縮するような場合には、その理由を労働者にあらかじめ説明することが求められます。
② 無期転換の申込機会等の明示
有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた場合、労働者が会社に申し込むことにより、期間の定めのない労働契約に転換できる制度(無期転換ルール)があります。会社は、無期転換権が発生する更新のタイミングごとに、労働者に対して、無期転換申込機会の明示が必要となります。
さらに、無期転換後に有期労働契約時の労働条件が変わる場合には、 その内容についても、契約更新のタイミングごとに明示が必要になります。
今回の改正は就業環境の変化を受けての内容となっていますが、実務を行う上での詳細については、今後、 厚生労働省のホームページ等で、新たな情報が出てくる予定です。
その情報を踏まえて、 対応を検討しましょう。