2019年10月29日、厚生労働省から令和元年版の「労働経済白書」が公表されました。
今年は副題に「人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について」とあり、現在多くの企業が実感している人手不足の状況が職場環境へ悪い影響を与えており、その結果個人の「働きやすさ」を損ね、「働きがい」の低下を招いている可能性があると指摘しています。
「働きがい」の低下は労働者の疲労・ストレスを増大させ、仕事の生産性を低下させることで企業経営にも支障をきたす可能性があるため、「働きがい」を向上させる必要があります。
その前提として「働きやすさ」の基盤をしっかりと構築するための取り組みが重要であり、人生100年時代を見据えた誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現に向けて、「働き方改革」を「働きやすさ」と「働きがい」という両観点から推進し、人手不足を緩和していくことが重要であると提言しています。
では労働者が「働きやすさ」を実感できる企業の雇用管理のポイントとは、
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・職場の人間関係やコミュニケーションを円滑にする
・有給休暇所得の促進
・労働時間の短縮や働き方に柔軟性をもたせる
- が男女・年齢問わず挙げられます。
また、15~44歳の女性にとっては
・仕事と育児の両立支援
が重要な要素となっています。
当白書では「働きがい」という一見抽象的な概念に対し、ワークエンゲイジメントという客観的に捉えるための概念を導入し、「働きがい」をめぐる現状を分析しています。
「働きがい」を向上させるために有効な雇用管理・人材育成のポイントのポイントとして、
①成長実感の向上といった観点からは、
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・ある程度努力を要とする難易度の目標を設定する。
・上司が相対的に高い頻度で日常業務に対するフィードバックを実施し、その上でその手法は、行動した内容の重要性や意義について説明しながら、行動した直後にほめることが大切である。
②勤務先の企業でのキャリア展望の明確性を高めるという観点からは、
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・比較的高い頻度で管理職と今後のキャリア展望について話し合うこと。
・現在担当している業務について将来的に必要となる技能やスキルを話し合ったり、希望している業務の意義や重要性を話したりする。
③現在39歳以下の若手社員には「この人のようになりたい」という、いわゆるロールモデルとなる先輩が必ずしも多い状況にないことから、
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・前提として勤め先企業でのキャリア展望を計画にする必要がある。
・若手社員にはロールモデルがいない可能性に留意しながら、ロールモデルの在り方について労使でしっかり話し合っていくことが重要である。
との指摘・提言が記されています。