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賃金等請求権の消滅時効の期間 令和2年4月から「3年」に

投稿日:2020年1月29日

現在、労働基準法第115条では、労働者が未払い賃金などを請求できるのは「過去2年分」までと規定しています。ここでいう「賃金」とは,労働の対償として支払われる全てのものをいい,残業代も含まれます。

厚生労働大臣から令和2年1月10日付で、賃金等請求権の消滅時効の期間を含む労働基準法を改正する法律案の要綱が示されました。
その内容は、賃金等を請求できる期間を、現行の2年から当面3年に延長するというものです。今回は改正のポイントやその背景についてまとめました。

民法改正による影響

今回の賃金等請求権の時効延長には、約120年ぶりに改正される民法が深く関わっています。1896年制定の民法では、賃金等請求権は1年とされていましたが、1947年制定の労働基準法では労働者保護の観点から2年とする特例が設けられました。
しかし、2020年4月に改正される民法では原則的に「すべての債権の時効が5年」と規定されます。それに対応し、労働基準法では労働者の権利を守るため将来は5年への延長を視野にいれつつ、企業経営の負担が過大にならないよう、経過措置として当面は3年に延長する見込みです。

賃金等請求権の消滅時効の改正のポイント

・賃金請求権の消滅時効の期間は、民法の一部改正とのバランスも踏まえ、「5年」とする。
 ※当分の間、現行の労基法に規定する記録の保存の期間に合わせて「3年」間とする。

・退職手当の請求権の消滅時効の期間については、現行の「5年」を維持。

・起算点は、現行の労基法の「客観的起算点(権利を行使することができる時から起算)」を維持する。

・賃金請求権以外の請求権(年次有給休暇請求権・災害補償請求権は2年、帰郷旅費は契約解除より14日以内等)の消滅時効の期間については、現行の消滅時効の期間を維持する。

・労働者名簿や賃金台帳等の記録の保存の期間については、賃金請求権の消滅時効の期間に合わせて原則は「5年」としつつ、当分の間は「3年」とする。

・付加金の請求期間については、賃金請求権の消滅時効の期間に合わせて原則「5年」とする。
 ※当分の間は「3年」とする。

・施行期日については、民法一部改正法の施行の日(「令和2年4月1日」)とする。

・労基法における経過措置として、「施行期日以後に賃金の支払期日が到来した賃金請求権」の消滅時効の期間について改正法を適用することとし、付加金の請求の期間についても同様の取扱いとする。

・施行後5年を経過した場合、検討し必要な措置を講じる。

厚生労働省では、令和2年の通常国会に労働基準法の改正案を提出し、改正民法と同時の施行を目指すことになります。順調にいけば、賃金請求権の消滅時効の期間は、2年間→3年間→5年間と、段階的に延長されることになります。
仮に、令和2年4月1日以降に支払期日がある賃金について、未払いのまま放置し続けて、3年後にまとめて請求されたということになれば、支払額は膨大になります。
改めて、未払い残業代等のリスクが高まることが予想されますので、企業は適切に労働時間の把握・管理を行うと共に、勤怠集計や給与計算の正確性がより重要となってくるでしょう。

※この記事は「クロノス株式会社」のホームページに掲載されたものです。

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